病気のこと
統合失調症
統合失調症は、100~120人に1人がかかる精神疾患の中でも決してまれな病気ではありません。症状は患者さまごとに実にさまざまですが、その中でも陽性症状と呼ばれる幻覚(現実にはないものをあると感じる)や妄想(非現実的なことを信じ込む)は、統合失調症を特徴づける代表的な症状です。
このような症状のために周囲から見ると異常な行動をとっているように見えますが、実は思考や感情などの精神機能のネットワークがうまく働かなくなったために、さまざまな心の働きをまとめ上げることができない(脳内の統合する機能が失調している)状態なのです。
また、感情に起伏がなくなったり、やる気や物事への関心が低下する陰性症状と呼ばれるものが陽性症状に遅れて現れてきます。現在では治療薬の進歩にともなって症状の多くがコントロールできるようになっていますので、早めに受診して治療を受けることが大切です。
うつ病
人は誰でも悲しいことがあったり大きな失敗をすると、気分が落ち込んだり憂うつになりますが、心や体を休めたりリフレッシュをはかることで、時間の経過とともにもとの状態に戻っていきます。しかし、落ち込んだ気分が長く続き生活に支障が出たり、集中力や判断力の低下により仕事が前よりはかどらなくなった場合には治療が必要となります。そして精神的な症状とともに不眠や食欲低下、肩こり、頭痛、便秘や性欲低下などの身体的な症状も同時に現れてくることがあります。
また、精神的な症状はなく身体的な症状が続くにもかかわらず、検査で調べても身体の病気がない「仮面うつ病」と呼ばれるものもありますので、このような場合にも、精神科を受診することをお勧めします。
躁うつ病(双極性障害)
躁うつ病とは精神疾患の気分障害の一つで「躁状態」と「うつ状態」の 2つの状態を繰り返す病気をいいます。躁状態は気分が極端に高揚した状態で、気分爽快で何でもできるような気持ちになり、支離滅裂な言動を発したりする状態になります。また、自分では精神科医による治療も必要性を感じませんが、放っておくと極端なうつ状態に落ち込むなど、症状は人それぞれであるため、早期の治療が必要です。
躁状態でよく見られる行動・心理状態
- イライラしたり、怒りっぽくなっている
- 睡眠をとらなくても平気だと思う
- 肥大した自尊心、誇大感がある
- 普段よりも饒舌になる
- 考え方が飛躍したり、思考が頭の中を駆け巡っていると感じる
- 注意力が散漫になっている
- 後で苦痛になるとわかっているのに快楽的な活動を過剰にしてしまう
強迫性障害
かつては「強迫神経症」と呼ばれていた心の病気です。この病気の主な症状は、不要な考えが心の中に繰り返し起こる「強迫観念」と、それを打ち消すために行われるさまざまな「強迫行為」です。よく知られている症状には、手がばい菌などに汚染されていると感じて、何度も手を洗わずにはいられない「洗浄強迫」や外出時などに鍵をきちんとかけたのかが気になって何度も確かめてしまう「確認強迫」などがあります。
以前はなかなか治りにくい病気と思われていましたが、現在はこうした症状を抑えるのに有効なおくすりが開発され、治療法も確立していますので、多くの患者さまがつらい症状から開放されるようになりました。
認知症
年とともにもの忘れがひどくなると「もしや認知症では?」と心配になることがあるものです。しかし、老化によるもの忘れと認知症では表のように忘れ方の内容や度合いが明らかに違います。身近な人や親しい人でも、とっさに人の名前が出ないのは一般的な物忘れでよくあることですが、認知症では名前だけでなく、続柄や関係までわからなくなります。また、食事の献立を忘れるところまでなら単なる物忘れといえますが、認知症では食べたこと自体を忘れてしまいます。
認知症の原因は、アルツハイマー病や脳血管障害による認知症、その他の認知症に大別できますが、おくすりで病気の進行を遅らせることが出来ますので、疑わしいときは早めに受診してみることをお勧めします。
老化によるもの忘れ
- ・体験の一部を忘れても全体は忘れない
- ・物の名前忘れが多いが、ものごと自体は忘れない
(例:食べた献立は忘れるが、事実は忘れない) - ・物忘れを自覚している
- ・人・場所・時間に関しては、ほぼ正しく認識できる
- ・日常の社会生活に支障はない
認知症の症状
- ・体験の全体を忘れる
- ・物の名前だけでなく、ものごと自体も忘れる
(例:食べた献立だけでなく、事実まで忘れる) - ・物忘れの自覚に乏しい
- ・人・場所・時間を正しく認識できにくくなる
- ・日常の社会生活に支障をきたすことがある